— 生命力溢れる瑞々しい緑。宙に浮く庭園から滴り、循環するクチナシの水。虫も人も誘われる香りが楽園への道しるべ。

萩原亮大の感性を 「 覗く 」


「 空想庭園 」


大自然や旅の風景を思い起こす人が多い「ドリーミング ガーデニア」の香り。まぶたを下ろし嗅いだ萩原さんが空想のなかで飛んだ先は、若き日に旅した常夏の楽園、バリでした。甘さが漂うクチナシと世界各地の植物がつくり出すベレアラボの「香り」に寄り添い生まれた、宙に浮く庭園が幻想の世界へと誘います。

— 萩原さんにとって、「香り」とは…。
香りは、過去の情景を思い浮かべたり、自分の記憶の引き出しを開け閉めする装置のような役割を果たしているなと感じます。
— 「ドリーミング ガーデニア」を嗅いで頭に浮かんだイメージは?
色で言うと、黄色ですね。同時にエキゾチックで少しスパイシーな香りもして、以前にバックパックで旅したバリのウブドを思い出しました。海パンひとつでバイクを運転して、ザーっと雨が降ってきたときのような雰囲気を感じました。雨が降った時のペトリコールのようなちょっともわっとした感じもある。ほかに湿っぽさや苔、形で言うと○、丸だけどふわっとした雲みたいな○が頭に浮かびました。
— 頭に浮かんだイメージを、どう作品に落とし込みましたか?
バリのエキゾチックな雰囲気を出すために、中央にはバナナや食虫花といった東南アジアの花を飾っています。虫が誘われる匂いやフェロモンを出す植物なので、“香り”というコンセプトにはぴったりだと思いシンボリックに使いました。散りばめた黄色の花もすべてはじめに香りを嗅いで浮かんだイメージを可視化しています。
— 作品に込めた想いは?
調香師は、その素材が持つ「香り」という、目には見えない要素を抽出して表現をしています。その手法を花を「生ける」ことにどうにかして応用できないかと試行錯誤しました。「ドリーミング ガーデニア」に使われているクチナシは、「白い花」です。その実は煮出すと黄色や茜色に色づける染料になります。そんな目には見えない植物の秘められた性質を「空想庭園」に落とし込み、循環する水にはクチナシの実を煮出した染料液を使っています。ほかにも、作品を吊り上げて浮遊感を出したりと、ただのミニチュアの庭園ではない空想の世界観を散りばめました。また、品種改良により飛べなくなった蚕の成虫を作品の中に放したのもファンタジーな演出のひとつです。作品の裏テーマとしては、絹糸を分泌し、人のために自然界を見られずに息絶える蚕の極楽浄土になれば良いなという想いを込めました。
— 「香りのアート」を制作するなかで苦労したことは? 
花はひとつひとつ美しく、個性があるので、ただ生けるだけでも花自体が語ってくれます。それはとても素敵なことですが、表現者としては危険なことでもある。花の美しさに頼ってしまうんです。花に委ねることと、頼ることは違います。今回つくるべき作品は花単体が語るんじゃなしに、作品として“花と一緒に語れる”ものにしなければならない。そこを心がけました。

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