— 中心にあるのは芳醇な果実。溢れるように浮き出て、ゆっくりゆっくりと広がっていく。移ろい変化する「香り」がただ、存在しているかのように。

中瀬萌の感性を 「 覗く 」


「 移ろい 」


みずみずしさと華やかさを漂わす「スウィンギング ペアー」のフルーティーフローラルな香りを、中瀬さんは奥行きのある色とテクスチャーで表現しました。香りと共に彼女の頭の中に広がった、果実の芳醇さ、森林を抜ける爽やかな風、朝露が蒸発する情景…。それら目に見えないはずのものが、すべてキャンバスの上に確かに存在しています。

— 中瀬さんにとって、「香り」とは…。
「香り」は、見えないものの存在を確かに感じさせてくれるもの。移り変わっていく自分自身のことや、季節のめぐりなど、いつも「香り」が教えてくれる気がします。
— 「スウィンギング ペアー」を嗅いで浮かんだイメージは?
熟れたキウイや洋梨の香りのあとに森林の中に風が吹くような爽やかさと、春から夏にかけて季節が移り変わる時期の早朝に朝露が蒸発していくような情景が頭に浮かびました。
— 頭に浮かんだイメージを、どう作品に落とし込みましたか?
私にとって「香り」は、過去の自分の色々な状況を思い起こさせてくれるもの。当時の情景と自分の気持ちをリンクさせたり、これからのことを思い浮かべたり、と想像にふける世界を作品に投影しました。
— 作品のテーマは?
テーマは「移ろい」です。「香り」は、時間帯や、その日の天気、さらに自分の気持ちによって受け取り方が変わってきます。特に変化の大きいこの時代に、移ろい変化してゆく自分を肯定し許容する、そして同時に包容することが現代に必要なことだと感じ、そんな様子を感じ取ってもらいたいです。
— 作品の色使いやタッチで表現したかったことは?
中心にある芳醇な果実が溢れるように浮き出て、ゆっくりゆっくり広がっていく様子を表現しました。蝋を使い、中心は厚く、外側は薄く広がりをもたせています。最終的に蝋を火で溶かし、表面をなめらかな質感に仕上げていくのですが、完全なフラットにはせず、自然な凹凸とざらつきを残すことで、ただ、「香り」がそこに存在している…そんな様子を感じ取ってもらいたいです。
— 「香り」を具現化するなかで苦労したことは?
制作する時の気温、天気によって「香り」の漂い方が違うように感じました。そんな「香り」の日々の移ろいをどう作品に落とし込むかは、とても考えました。
— 普段からアート制作で心掛けていることは?
夜はしっかりと寝て、朝は決まった時間に起きる。このルーティンを保つことで、できるだけありのままの自分でいることを心がけています。
— 香りに包まれた空間でのアート制作はいつもと違いましたか?
いつも気に入ったお香を焚いて制作しています。今回は、普段自分では選ばないようないつもと違う香り。それが逆に刺激となり、作品に対して新鮮なアプローチを掻き立ててくれました。
— 中瀬さんが思う、ベレアラボの魅力は?
“香りを体験する”というコンセプトがとても面白い。「香り」を嗅いだ時に思い浮かべた場所や風景を訪れたような感覚が味わえると思いました。

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